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略して「SI住宅」とも呼ばれています。 テレビや新聞で目にした方も多いでしょうが、SI住宅がここ数年で日本の集合住宅のあり方を激変させるほどのインパクトを秘めていることは、意外に理解されていないようです。
スケルトンは躯体、インフィルは間取りや設備のことで、建物をスケルトン部分とインフィル部分に分離できる集合住宅のことです。 スケルトン部分は百年以上長持ちする「耐久性」を重視してつくり、インフィル部分は住む人の生活や社会の変化に対応して自由に変えられる「可変性」を重視してつくられるものです。
この「分離できる」ということが極めて重要なのです。 というのは、従来の日本の集合住宅のほとんどは、スケルトンのなかにインフィルが組み込まれる形でつくられていました。
それに加えて、「時代の変化」という要素があります。 それに対応できなければ、設備などはあっという間に陳腐化してきます。
たとえば第1部ですでに述べたように、これまでは電話線だけですんでいた情報回線も、あと数年で光ファイバーが当たり前の時代になってきます。 数年単位で登場する新しい情報機器に次々と対応できなければ、「古マンション=不人気マンション」の名に甘んじなければなりません。
こう考えると、スケルトンとインフィルを分離できる「SI住宅」が、二十一世紀の主だ。 そのため、インフィル部分が老朽化すればスケルトン部分も壊されてしまうことになり、長持ちする住宅にはならなかったのです。

躯体そのものは長期間の使用に耐える強度があっても、設備や内装の部分はすぐに傷んできます。 当然、修理・修繕などのメンテナンスを施して新築時の居住性を保とうとします。
内装や造作程度なら比較的容易に変更できますが、水回りの給排水管やガス管などは壁のなかを通っていますから、大幅な改造など事実上不可能です。 まして、こうしたパイプ類が長年の間に劣化し水漏れやガス漏れなどの危険が発生して使用に耐えなくなれば、建物自体はしっかりしているのに事実上は居住できなくなってしまいます。
役になることは必然であると言えるのです。 ここで、なぜスケルトン・インフィル住宅に注目が集まるようになったのか、その背景を考えてみましょう。
日本の住宅の最大の問題は、欧米に比べて短命であることです。 各国の住宅の寿命を比較したグラフをみれば一目瞭然ですが、イギリスが百四十一年、アメリカが百三年、フランス八十六年、日本と同様の敗戦国ドイツでさえ七十九年です。
それに対して日本の住宅寿命はたったの三十年しかありません。 国際的にみると「異常」とさえ言える短さです。
新築から平均して三十年経つと、せっかくつくった家を取り壊して建て直しているのですから実にもったいない話ですし、大変な資源の浪費にもつながります。 限りある住宅資源を、アメリカの三倍以上のペースで消費・浪費していることになるのです。
また、取り壊せば必ず焼却するか廃棄しなければなりません。 建設資材リサイクル法が二○○○年十一月に施行されました。
建築廃棄物の規制は今後ますます強化されるでしょうし、それにともなって高い処分費用がかかることにもなります。 それだけではありません。
単に資源の論理だけではなく、大量の建築廃棄物は、地球的規模のテーマとなっている環境保護の面からも、大きな脅威です。 日本の住宅が短命であることは、やがて国際的な批判にさらされるでしょう。
これが、国土交通省がスケルトン住宅の普及に本腰を入れている大きな理由の一つだと言えます。 日本の住宅も、建て替えではなくリフォームで対応する時代、耐久性のある建物を求める時代になっているのです。

ところが、こうした時代の要請とは裏腹に、これまでの集合住宅には長寿の実現を阻むいくつかの要因が存在していました。 そのうち、主要な三点をあげてみましょう。
一つは、居住空間の「ゆとり」の問題です。 一九六○年ごろから本格化した日本のマンション建設は、七○年前後には一気に「大衆化・量産化」が進みました。
分譲でいえば、比較的低価格で間取りは標準的な2DKタイプが主体です。 賃貸もほぼ同じ路線を踏襲しました。
ところが、その後の社会や経済の変化にともなって居住水準は大きく向上しました。 この時期に建設されたマンションの多くはゆとりのない居住空間だったため、いまでは「使いにくいマンション」になっているのが現状です。
その教訓を生かして、一部ではゆとり度の高いマンションが登場してはいますが、極めて高価格であるのが難点です。 そのため、近年になっても家賃や価格をおさえるために住かいだか宅面積や階高を切り詰めた建物も依然として多く、いずれは質の低いストック、在庫になってしまうと危慎されています。
比較的低価格でゆとりのある居住空間を実現することが、大きな課題になっているのです。 二つ目は、メンテナンス費用の問題です。

新築する時には気づかないものですが、修繕や改修などのメンテナンスにかかる費用は新築時の建築費に比べて意外に割高です。 「どう割高になる最も大きい理由は、修繕・改修のしにくい従来の建築工法にありますが、さらに免許制度や住宅資材の流通のあり方が効率的な工事を阻害しているとも指摘されています。
いずれにしても、これらを見直すことによってメンテナンスコストを大幅に下げることが、住宅の長寿命化につながります。 三つ目は、「変化に対応できない」という問題です。
社会の急激な変化のなかで、建物が本来の機能を発揮できなくなる事態が発生することが多々あります。 たとえば環境の変化です。
建物完成時には最適の住宅地だったのに、周辺に工場や高速道路ができたり深夜営業のディスカウントショップがオープンしたりして、いつのまにか住宅地としての適性を失って人気が衰え、やがて「空室ばかり」ともなりかねません。 こうして機能を発揮できなくなった建物が、より高い経済的利益を求め、土地の用途を変更するために壊されてしまう例も、決して少なくありません。
したがって住宅の長寿命化を実現するためには、将来にさまざまな社会の変化にあわせて用途を変えることができるような、可変性の高い建築技術を確立する必要があるのです。 せ費用がかかるなら、建て替えてしまえ」といった動機が、建て替えを助長している。
国土交通省(当時は建設省)のプロジェクトは、SI住宅を「長持ちする仕組みを取り入れた集合住宅」と定義した上で、次のような例を提示しています。 パイプや電線を構造体に埋め込まない。
共用通路から給排水管、ガス管などの修理や交換ができるように住戸の外に設ける。 では「長寿命住宅」を実現するSI住宅は、従来の住宅と具体的にどう違うのでしょう。
長期に地震などに対する強さを保持できるように、耐久性の高い材料を適切に組み合わせる。 柱や壁などの構造体に制約されない広い空間を確保する。
いずれの例も、これまでの集合住宅ではほとんどかえりみられることのなかった部分に着目していることがわかります。 将来取り外せるようにつくられているか、または二戸を合わせて大きな住戸に改造できるように壁の一部が開けられるようになっている。

長く親しまれる街並みの形成に配慮する。 二重天井や二重床を確保し、将来の模様替えに対応しやすいように階高を高くすることができます。

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